2010年9月8日水曜日

財政の維持可能条件-(ドーマー条件)

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財政が維持可能かどうかの条件として、ドーマー条件が良く挙げられます。
ドーマー条件とは、
「【(名目利子率)より(名目GDP成長率)のほうが大きい】ならば、
長期的には国の債務額がGDPと比べて非常に小さくなる(=財政が維持可能である)」

以上の【】内、【(名目利子率)より(名目GDP成長率)のほうが大きい】ことを指します。
以下、数式を記述しつつ、ドーマー条件を求めてみます。*1


政府の予算制約式は、
総支出-総収入=債務増加額、
つまり
(政府支出(利払額除く))+(債務利子支払)-(税収)=(純債務増加額)
となります。以上の式について、
t: 時刻
G: 政府支出(除利払額)
T: 税収
B: 債務残高
i: 利子率
とおく(全て名目値)と、以下のように書くことができます。
\[G_t+ i_tB_{t-1}-T_t=B_t-B_{t-1}\]
$B_t$ を左辺に持ってきて、
\[B_t=G_t-T_t+(1 + i_t)B_{t-1}\]
ここでの$G_t-T_t$は時刻tでの(利払いを除いた)財政支出と税収との差を表します。この「(利払いを除いた財政支出)-(税収)」が「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」と呼ばれるものです。以下、プライマリーバランスの黒字額をSとおきます。
S = T - G: プライマリーバランス黒字額
\[B_t=-S_t%2B(1 %2B i_t)B_{t-1}\]
両辺共に名目GDP(Y)で割ります。([(債務)/(GDP)]が発散すると財政破綻になる)
Y: 名目GDP
\[\frac{B_t}{Y_t}=-\frac{S_i}{Y_t}%2B(1 %2B i_t)\frac{B_{t-1}}{Y_t}\]
GDP成長率をnとおき、t期のGDPを$Y_t=(1 %2B n_t)Y_{t-1}$で表すと、
\[\frac{B_t}{Y_t}=-\frac{S_t}{Y_t}%2B \left(\frac{1%2Bi_t}{1%2Bn_t}\right)\frac{B_{t-1}}{Y_{t-1}}\]
B,S の対GDP比をそれぞれ小文字で b,s で書き、
そのうえで i,n を時刻によらず一定とします。
ここで、
\[\frac{1+i}{1+n}=\alpha\]
とおけば、
\[b_t=-s_t%2B \alpha b_{t-1}\]
もしくは
\[b_t=-\sum_{T=1}^{t}(\alpha^{t-T}s_t)%2B\alpha^tb_0\]
となります。これを整理すると、
\[b_t=\alpha^t \left[b_0-\sum_{T=1}^{t}(\alpha^{-T}s_t) \right]\]
ここで、
\[\alpha\lt 1\]
のとき、b_t(=債務額/GDP)は長期的に0に近づいていきます。
このとき、$1\gt \alpha=(1%2Bi)/(1%2Bn)$から、
\[n\gt i\]
((名目利子率)より(名目GDP成長率)のほうが大きい)となります。
これがドーマー条件((名目利子率)より(名目GDP成長率)のほうが大きいとき、債務額とGDPとの比率は長期的に0に近づく)です。

*なお、$\sum_{T=1}^{t}(\alpha^{-T}s_t) \geq b_0$となるとき
(=プライマリーバランスが黒字を維持し続けるとき)もt→+∞ ⇒ b_t<=0 となります。
ただ、GDPの成長がなければ税収は上がりませんし、経済対策として財政支出も増加しますから、GDP成長が無いままプライマリーバランスを黒字にする(財政を維持する)のは困難です。
「財政再建の前に経済成長が必要」というわけです。
*1内容はこちらhimaginaryの日記-ドーマー条件、NPG条件、Bohn条件を参考にしました。というかまるっきり同じですね。すみません。

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