OECDのデータ(1979-2008)を用い、国別に潜在GDP成長率とインフレ率との相関係数を計算し、相関係数の検定を行った。結果、潜在GDP成長率とインフレ率との間に正の相関がある国と、負の相関がある国は、ほぼ同数になった。このことから分かるのは、「潜在GDP成長率とインフレ率との間には一定の関係はない」---「潜在GDP成長率の低下がデフレをもたらす」という主張は、現実のデータに反している---ということだ。
「潜在成長率の低下がデフレをもたらす」という主張がなされることがある。はたして、これは本当だろうか。もしこの主張が本当なら、少なくとも、各国ごとにデータを見た際、潜在GDP成長率と物価変化率との間に高い負の相関がある国は、高い正の相関がある国に比べ、ごく少数しか存在しないことになる。
当記事では、以下の手順を踏み、「潜在GDP成長率の下落がデフレをもたらす」という主張を検証する:
- OECDの年次データを用いて、各国ごとに潜在GDP成長率と物価変化率との相関係数を算出した後、
- 各国の相関係数について検定を行い、
- 有意となった相関係数の符号ごとの数を数える:プラスが-個、マイナスが-個、といった具合に。
- この時、プラスの数が多く、マイナスの個数が少ないならば、「潜在成長率の停滞とデフレには関係がある」ことは否定できないことになる。
それでは検証に移ろう。